「オカアサン、このりんご食べてもいい?」
カツ子さんが無邪気な笑顔で言う
「さあ、今日は夜回りに行きましょう!」
カツ子さんが凛々しい顔で言う
「今読んだところ、わかりましたか」
カツ子さんが優しく言う
カツ子さんは77歳 負けず嫌いのO型
昔は萩小町と言われたほどの美人
私の叔母
…そして 認知症
カツ子さんは毎日誰かになる
幼女や、青年団の憧れのマドンナや、先生
カツ子さんの頭の中はいったいどうなっているんだろう?
だけど、変わらないカツ子さんもいる
私に会うと必ず言う
「体に気をつけてね。かん難、汝を玉にする。
辛抱するんだよ。そして、みんなに好かれる人になるのよ」
私の叔母でいてくれる
カツ子さんに会うだけで私は幸せな気持ちになれる
人が生きている理由はいろいろあるけれど
誰かを喜ばせることが出来るというのは立派な理由のひとつ
誰かと一緒に喜んだり、悩んだりしたい
誰かのために笑ったり、泣いたり出来る毎日でありたい
誰か 誰かのおかげで 誰かとともに 私たちは生きている
カツ子さん… 今日はだあれ…?
( 居宅 梶原 )